2015年12月07日

コダーイ・メソッドとは

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「うたとリコーダーの会」では、「コダーイ・メソッド」
という音楽教育方法を基に進めています。

「コダーイ・メソッド」とは、ハンガリーを代表する作曲家、音楽学者、音楽教育家、民族音楽学者、言語学者、 哲学者であったコダーイ・ ゾルターン(Koday Zoltan 1882年~1967年)の教育理念と指導原理(コダーイ・コンセプト)を柱にし、諸外国の優れた教育方法を修正・改良して取り入れ体系化したもので、スイスの作曲家・音楽教育家エミール・ジャック=ダルクローズ(1865~1950)が提唱した「リトミック」、ドイツの作曲家カール・オルフ(1895~1982)が提唱した「オルフ ・システム」と並ぶ、世界を代表する音楽教育方法のひとつです。

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コダーイ・コンセプト(指導原理)

「コダーイ・コンセプト」の幾つかを、コダーイ自身の言葉からまとめると以下のようになります。

 ●音楽は、万人のもの
コダーイは、「音楽は万人のもの」、つまり「音楽はエリートのための娯楽ではなくて、教養ある人々がすべて公的な財産にしていくべき精神的な力の根源である。」と言い、かつて古代ギリシアがそうであったように「音楽ぬきに完全な人間はありえない」 として、一般教育における音楽の役割を重視しました。

その理念に基づきハンガリーでは、幼稚園から唯一の国立音楽大学である「リスト音楽アカデミー」に至るまで専門教育、一般教育の別を問わず、すべての段階で一貫した音楽教育が行われています。

また、古今東西(世界)の音楽的傑作を万人の宝にし、「全人類の永遠の調和を反映し、またそのこととどう適合することができるかを示すこと以外に、音楽の使命は他に何があるだろうか」と、音楽は世界平和を実現することができるもの、とも考えていました.

 ●歌唱の重視
音楽の真髄に近づく最もよい手段は、誰もが持っている楽器、のどを使うことであるとし、歌うことを音楽教育の中心にしています。

歌う時にはピアノの伴奏は付けずに肉声のみで行い、音を注意深く聴くことができる耳を育てます。
(10歳ごろからの、和声についての学習などで必要になった場合には使っていきます)。

ピアノを使わない理由として、多くの音楽が純正調で演奏されているのに対し、ピアノは平均率で調律されているため、ピアノを音楽の練習の補助に使うと、純正調の音程が身に付かないということをあげています。

また「多声を聴く耳」を育てるために、お互い違う声部を聴き合うことができるようグループで行われます。

器楽教育においても「聴けなければ歌えない、 歌えなければ弾けない」という立場を取り、子供たちが楽器を演奏することを始めるのは、「少なくともリズムと階名で流暢に楽譜を読むことができるまでは、楽器に触れるべきではない」とし、十分に歌うことができるようになり手先の運動能力が発達した7、8歳頃からとし、器楽教育の中でも必ず歌唱を行っていきます。

●音楽伝統の重視
コダーイは、音楽の母語であるわらべうたや民謡から音楽教育を始め、自国のわらべうたや民謡が本当に身についてから、外国の音楽を歌うべき、としました。

それぞれの民族には、その民族独自の節使いがあり、わらべうたや民謡はその節使いでできているため、そこから音楽教育を始めることは、音楽における民族意識を身につけさせることになり、また子供たちにとっては歌いやすく、表現しやすいとも考えられました。

また、わらべうたや民謡には、民族の文化や生活などが歌い込まれているので歌い遊ぶことでも民族意識を身に付けることができると考えました。

そしてその後に、外国の音楽を歌い演奏すべきとしました。

そのことをコダーイは、「大雨や洪水、大風で壊れない家を建てようとすれば、砂の上ではなく、岩の上に立てなければならない。われわれの岩は古いハンガリーの民謡(日本人にとっては日本のわらべうたや民謡)でしかありえない。」と言いました。

 ●早期音楽教育の重視
コダーイは、 「子どもの音楽教育は生まれる9か月前-子どものではなくて母親の誕生のーからはじめるのです。」と言っています。

それは、子供の音楽教育は、生まれてすぐに家庭の中で、自国のわらべうたを歌い聴かせたり、遊ぶことで行われるとしています。

しかし母親がそれをすることができなかったら、子供はそれを受け取ることができません。

ですからまずは母親が教育されるべきであり、そのためにはさらにその母親が・・・・というように、早く行なわれなければならないということになります。

「これを誇張と思う人たちでも、第一印象というものが一番残るものであることを認めるはずである。」とコダーイは言っています。

 ●ソルフェージュ教育の重視

音楽の共通言語である楽譜を、すべての人が読んだり書いたりできるようにし、「音楽の文盲をなくさなければならない。」としました。

そのためにソルフェージュ(読譜しそれを表現する力)教育を重視し、そのための具体的な方法を、世界中のすぐれた方法を取り入れ、改良しながら体系化していきました。

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 ソルフェージュ教育におけるコダーイ・コンセプト

「コダーイ・メソッド」には、ソルフェージュを教授する際に重要とする原則があります。

●生きた音楽の原則
楽典の知識を得ることも、リズムや形式の観察も、すべて生きた音楽で行うという原則があります。

つまり、「ド」「レ」という音、というように抽象的に教えたり、その知識や技術を得るための目的のためだけに作られた機械的な練習曲を用いるのではなく、充分味わいながら歌えるまでになった伝承の歌や芸術的古典作品などの部分で示されるべきとしています。

●いつも新しい材料の原則
知識や技術を体得しようとする時、同じ歌で同じ練習の仕方を何度もするのではなく、いつも新しい歌ややり方で前に学んだことを練習していくという方法を取るべきとしています。

 ●知的、情緒的、運動(メカニズム)的統一の原則
コダーイは「よい耳、高い知性、善良な心、活動的な手」が「平均的に教育されないといけない。」(シューマンの「よい音楽家像」を引用しては「磨かれた耳、磨かれた心、磨かれた頭、磨かれた手」)と言っており、この4つの統一、調和を念頭に置く教育が幼児期から貫かれています。

コダーイ・メソッドは人格教育としての音楽教育といえます。

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コダーイ・メソッドによるソルフェージュ教育の方法

「コダーイ・メソッド」によるソルフェージュ教育方法の幾つかを紹介します。

 ●移動ド唱法
楽譜の音符を読むときの方法には、同じ高さの音(絶対音高)はみな同じ名前とする「音名唱法」(ドイツ=C(ツェー)D(デー)E(エー)F(エフ)・・・・、イギリス=C(シー)D(デー)E(イー)F(エフ)・・・・、日本=ハ、二、ホ、へ・・・・など)と、音楽の最後の音に注目して、音楽を作っているそれぞれの音の関係や役割(調性)を示す名前で読む「階名唱法」(ド、レ、ミ、ファ ・・・・)の2種類があります。

「階名唱法」は、11世紀の僧侶ギィード・ダレッツォが、聖歌を歌いやすくするために、聖歌を構成する6つの音(ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ)に名前を付けたことから生まれた方法で、開始音が与えられさえすれば、そこから階名唱することで旋律を歌うことができるという方法です。

17世紀には第七音の「シ」が加えられました。

コダーイ・メソッドでは、この7つの階名に加え、臨時記号で変化した音にも新しく階名を付けています。

「階名唱」では、開始音が異なると、五線上の「ド」場所が移動しますので、「階名唱法」を「移動ド唱法」とも呼びます。

それに対し日本の学校教育では、絶対音高で読む方法をとっていますが、絶対音高で読むにもかかわらず、音の名前は「階名唱法」の「ド、レ、ミ、ファ・・・」を使うということをしているため、音名で言う「c(ハ)」の音は「ド」と読まれることとなり、「ド」は固定されます。

このように、絶対音高を「ド、レ、ミ、ファ・・・・」で読むことを「固定ド唱法」と呼びます。

音楽には、「ハ長調」「ロ短調」など調性を持ったものが多くあり、また一つの曲の中でもいくつかの調が変わる転調による音楽表現があります。

調性感を持つことは、音楽を深く理解し表現するための大きな力となります。

「移動ド唱法」は、同じ階名の旋律を、様々な音高で終止するように歌うので、その終止音の高さ(調性)の違いを感じることができ、調性感を身に付けることができます。

それに対し絶対音高による教育では、音そのものの名前とその音の高さの記憶で楽譜を読んでいくので、どんな調性の音楽を演奏しているのかを感じにくくしてしまい、調性を感じる必要性が出てきた段階で、そのための練習をしなくてはならないということになります。

コダーイ・メソッドは、「移動ド唱法」のみで進めていくのではなく、併行して絶対音高を身につけさせるために、「音名唱法」も行います。

コダーイは「楽譜から階名読みをし、それをいろんな調で、いつも絶対音高で歌いなさい。これは絶対音感をつける道である。」と言っています。

つまりコダーイ・メソッドでは、音楽の調性を身に付ける「移動ド唱法」と絶対音感を身に付ける「音名唱法」の両輪で進んでいくという特徴があります。

●文字符
コダーイ・メソッドでは、「移動ド唱法」を取り入れていることから、イギリスのジョン・スペンサー・カウエン(1816-1880)が発案した文字符も使って進めていきます。

文字符というのは、音の長さを表すリズム棒の下に、階名を書いたもので、開始音を与えられれば、文字符にある階名とリズム棒が表す音の長さを見ることで歌うことができるというもので、初歩の子供たちにとっては五線による楽譜よりも歌い易いものです。

●ハンド・サイン
コダーイ・メソッドでは、文字符と同じくイギリスのジョン・スペンサー・カウエン(1816-1880)が発案したハンド・サインに修正を加えたハンド・サインを用います。

ハンド・サインは、階名それぞれを手の形で示し、音が高くなるにつれて上部の方で、低くなるにつれて下部の方で示すことで音の高低を視覚的に捉えることができるとして有効のものとされています。

またその手の形は、その階名の役割を示せるような形となっており、階名の役割を、動作を通しまた視覚的にも感じることができるものとなっています。

●リズム唱
フランスのエミール・ヨセフ・シュベ(1804-1864)によって考案された「リズム唱」の考え方を参考に、様々なリズムに呼称をつけました。

呼称を唱えることでリズムの長さを体得するので、子供たちは楽譜上のリズムを容易に表現することができます。


●身体運動によるリズム教育
コダーイは「リズムは注意力や集中力、決断力、そして反射能力を育てる。」とし、「リズムのゲームや簡単な打楽器を通してすぐリズムの名人になる」幼児期こそがリズム教育に最も適していると言って保育園でのリズム教育の重要性を言いました。

コダーイ・メソッドでは、フランスのエミール・ジャック ・ダルクローズ(1865~1950)が創り出した律動的舞踊体操(ユーアリーズミック)やリズム運動を通しての音楽訓練の要素を取り入れ、歌を歌う時に一定の速さで歩行したり、リズムをたたいたり、拍子やリズムの特徴を強調したりしてリズム的要素を教える方法をとっています。

ただダルクローズの方式(リトミック)では、主にピアノを伴奏として使いますが、コダーイ・メソッドでは、ピアノは使わず、歌と結びついています。

またその歌は自国のわらべうたであり、運動は遊びと結び付けられて創られているところがダルクローズ方式(リトミック)とは異なるところです。

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コダーイ・メソッドの年齢別編成

●誕生から幼児教育のための集団に入るまで
誕生から幼児教育のための集団に入るまでの音楽教育は、生まれてすぐに家庭の中で、自国のわらべうたを歌い聴かせたり、遊ぶことで行われるとしています。 

わらべうたは、その民族独自の節使いでできているため、音楽における民族意識を身につけることができたり、また子供たちにとっては覚え易くすぐに歌うことができるので音楽表現もしやすいものです。

また、遊びをする中で、気持ちのやりとりやスキンシップが行われ、深い情緒的つながりによって子供をよりよく育てます。

このような人間的つながりの体験は、レコード、ラジオ、テレビなどに変わることができない価値の高いものです。

●集団の中での3歳までの教育
家庭での、家族とのわらべうたを通しての関係を、保育士との関係で引き続き行われます。

また、人形や小道具、絵などを動かしながら歌い聴かせることで、
①能動的に聴こうとする幼児の行為を助けたり、
②それらを鼓動(拍)に合わせて動かすことで拍感を
身につけさせます。

また、歌ってもらった歌を自分で歌うようになるまでの間に、頻繁に行われるひとりうた(即興)を見守もります。

●3歳から就学までの教育
3歳ごろになると仲間と一緒に歌いたい、遊びたいという要求が生まれること。「心理学者が主張するように3歳から7歳にかけての幼児期は」「はるかに重要なのだ」というコダーイの理念を受

①リズム感を身につけさせるための身体運動(歩行、手拍子、動作、ダンスなど)を、集団による遊びとして行い始めます。

この身体運動を通し、 
ⅰ)共通の鼓動を感じること
ⅱ)歌のリズムを認識すること
ⅲ)正しい音程で歌うこと
ⅳ)美しい姿勢や動きを行うこと
ⅴ)遊ぶ隊形による空間パターンを体感すること
を体得します。
②また、覚えた歌のリズムを、短く区切ってリズムモチーフを作り、2組での叩き返しなどのリズム遊びをしてリズム感を身につけます。
③音の高い―低い、大きいー小さい、速いー遅い、の区別を観察認識させます。
④歌われる歌や演奏を楽しむ鑑賞も行います。

 ●6歳以上(就学)からの教育
コダーイ・メソッドでは、就学後2年間は幼児期に行っていた集団による遊びとしての身体運動も続けます。

それに加え幼児期に歌い遊んできた音楽体験から体得した音楽要素を、認識、意識化して基礎的知識を教えていき、音楽を楽譜に記したり、楽譜から歌を歌うことを始めます。

コダーイ・システムでは、子供たちが楽器を演奏することを始めるのは、十分に歌うことができるようになり、手先の運動能力が発達した7、8歳頃からとし、コダーイは子供が最初に持つ楽器として「木製ツェンバロン(木琴ー鍵盤が外せるものがよいー)、2番目はリコーダーがよい。」
と言っています。

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<参考文献>
『わらべうた 音楽の理論と実践ー就学前の音楽教育ー』(明治図書)フォライ・カタリン著 畑玲子訳

『コダーイ・システムとは何か-ハンガリー音楽教育の理論と実践』(全音楽譜出版社)
フォライ・カタリン、セーニ・エルジエーベト共著 羽仁協子他共訳 

『コダーイ・ゾルターンの教育思想と実践 ―生きた音楽の共有を めざして―』(全音楽譜出版社)
中川弘一郎編・訳

『コダーイ・システムによる音楽指導の実際』(全音楽譜出版社) 羽仁協子著 

『うたえ!ピアノ』(全音楽譜出版社)伊藤直美編著  大島久子監修

『講演:ハンガリーの音楽教育ーコダーイ・コンセプトー』
『ワークショップ:コダーイ・コンセプトに基づいた音楽指導』
(日本音楽教育学会会報 音楽教育学 第39巻 第2号)
パヨル・マールタ(Pajor Márta)
posted by Hiromi Gokon at 15:08| コダーイ・メソッド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする